こころのままに

(注) これは正真正銘のスピ会作品です。不幸じゃなきゃスピンじゃないと思う方、暴走してないスピンを見ると不安を感じる方は、読み飛ばしちゃってください(爆)

「おーい、ねっくーん♪」
誰にも誕生日を祝ってもらえず、失意のうちにぶらぶらと艦内を歩いていたスピンネットは、ある意味聞き慣れた声に振り向いた。
「何だよ、ちんちくりん」
「ちゃんとメイヤって呼んでよ」
メイヤ・フォスターが、愛用のグイーンに腰掛けながらやってきた。
「じゃあ、お前もスピンネットと呼んでくれ」
「ちんちくりんでいいや」
即答するメイヤ。スピンネットは深く溜め息を吐いた。
「今日はなあ、お前に付き合ってやるような気分じゃないの」
「えー、折角いい物手に入れたのにさあ。昨日ねっくん誕生日だったんでしょ?」
スピンネットはその言葉に思いっきり反応する。突然やる気がみなぎってきた感じだ。
「そーかそーか! 俺の誕生日を祝ってくれるんだな!」
「1日遅れちゃったけどね。ほら、これ」
そう言って、メイヤは手にしていた一升瓶を差し出した。
「これはっ! 純米大吟醸『げどるとの海』!」
「とゆー訳で、飲もう飲もう!」
「やっぱり俺の事を分かってくれるのはお前だけだ、うんうん」
スピンネットはメイヤの肩をばしばし叩いた。ちょっと痛そうに顔を顰めながら、メイヤはスピンネットを引っ張っていく。
「分かった分かったから。泣かなくてもいいじゃないのさ」

「で、ここで飲むのか?」
「一回広大な宇宙を見ながら飲むっていう体験をしたかったの」
やってきたのは、展望室だった。それなりに遅い時間だが、めずらしくカップルらしい影もなく、二人しかいない。
「人が居たら無茶苦茶迷惑だったな」
「いっつも周りに迷惑かけてるねっくんがそんな事気にしてどうすんの」
「迷惑か?! 迷惑かけてるのか、俺は?!」
「自覚がないのが、困り者よねえ。ま、あたしは面白いからいいけどね」
「あのなあ」
「ほい、コップ」
「うおっとっとっと」
部屋の中央にでんと座りこんだ二人、お互いのグラスになみなみと透明な液体が注がれていく。
「それでは、ねっくんの26歳の誕生日を祝して、かんぱーい!」
コンとグラスが打ち合わされると、スピンネットはぐっと一気に傾ける。少し辛めだが、すっきりとした味わいで、後には豊潤な香りが残される。
「く〜〜〜〜〜っ! うまいっ!」
「もお、滅多に手に入らないもんなんだから、味わって飲んでよね」
「分かっとる分かっとる!」
ちっとも分かってないような雰囲気で、つまみのあたりめをくわえた。
「ねっくんも26歳かあ。初めて会った時とあんまり変わんないね」
「成長してないって言いたいのか、お前は」
「そんな事言ってないって。最近ひがみっぽいんじゃない?」
「うるせい」
「ほらほら、折角のお酒が不味くなっちゃうでしょ。楽しく飲まなきゃ、ね」
にこにこ笑って、メイヤはさらにスピンのグラスに日本酒を注いでいく。
「こら、あふれるあふれる!」
「あー、ごめーん」
「酒の一滴は血の一滴じゃ、馬鹿もん!」
「だったら、もっとありがたく飲みなさいよね!」
そうして、騒々しくも穏やかな時が過ぎて行く。今までの馬鹿話や、ルームメイトの暴露話が一段落ついて、ちょっとした沈黙が辺りを包んだ時、メイヤがぽつりと言った。
「ねえ、ねっくんはどうしてもう一度リヴァイアスに乗ろうって思ったの?」
「もちろん、あおいちゃんがいるからだ」
「ふーん」
顔は笑っているが、目は笑ってない。メイヤの表情に気圧されて、スピンネットはちょっとたじろぐ。
「あたしは、真面目に聞いてんのよ」
「わかったわかった。真面目に話すって」
あながち冗談でもなかったのだが、それ以上言うと何をしでかすか分かったもんじゃないので、普段じゃ絶対に見せないような真剣な表情になる。
「どうしてだろうなあ。正直、俺にもよく分からん。ただ……」
「ただ?」
「あれから家に戻ってからも、何となく周りとずれちまってる感じがしてさ。何がずれてるのかって言われると、分からんとしか言えないけどな」
グラスをゆらゆらゆらしながら、スピンネットは話を続ける。何で俺はこんな事をこいつに話してるのか、と思いながら。
「リヴァイアスに乗っていたせいなのか、元々のずれに気が付いてなかっただけなのか……多分、気付くまいと自分を騙してたんだろうな。結局自分を騙しきれなくなったのさ」
メイヤは黙ってスピンネットの言葉に耳を傾けている。
「ここに来れば、そういったものから逃れられるんじゃないかと漠然と思った。そうだな、逃げてきたんだ、有り体に言えば」
「そう……」
「ここはいいとこだぜ。船全体に、活力がみなぎってるし、あおいちゃんもいるし。何より、俺が俺でいられるからな」
「ねっくんって、昔からあんなんだと思ってたよ。前は真面目だったの?」
「あのなあ。お前は俺を何だと思ってるんだ」
「でもさあ、あたしは大真面目に馬鹿なことやってるねっくんも好きだよ」
その言葉にどきりとするスピンネット。冗談言うなと笑い飛ばそうとするが、メイヤの顔は大真面目だった。顔が少し赤いのは、酒のせいだけだろうか。
「酔ってんだろ、お前」
「酔ってるよ。酔ってるから、言える事だってあるじゃない」
メイヤはちょっとうらめしそうな顔をする。
「ねっくんはいつもそうだよね。肝心な事になるとすぐはぐらかすの。あおいさんの事だってそうよ。本当に好きなら、正々堂々やればいいじゃない。それなのに、あおいさんはねっくんの名前すら知らないんだよ」
スピンネットは言葉を返すことが出来ない。
「ねっくんが本当に欲しい物って何なのかなって、いつも思うよ。あたしじゃ、それを探す力にはなれない?」
「それは……」
「美耶子さんには、やめろって言われた事もあったけど。でも、あたしはバカじゃないねっくんの事も知ってるから。……好きなの、R.E.O.スピンネットっていう人が」
「……」
それきり、お互いに言葉を出すタイミングを失ってしまった。静かな時が、ゆっくりと刻まれていく。
スピンネットは、混乱していた。女の子から、こうして素直に想いを向けられた事など、初めてだったから。それに、あおいの事を言われたのは彼にとってもショックな事だった。
(俺は本当はあおいちゃんの事が好きじゃないっていうのか? いや、そんな事は無い。俺は誰よりもあおいちゃんを愛しているはずだ! ……でも、本当にそうなのか? うおーーーっ!!)
その瞬間、スピンは一升瓶を奪うようにに取ると、半分近く残っていた日本酒を一気にがぶ飲みする。
「ちょ、ちょっとねっくん?!」
「俺わ、俺わあ……」
そのまま床に突っ伏した。元来、それ程酒が強い方でもないのだ。
「あーあ、オーバーヒートしちゃったかなあ……」
そのまま仰向けにしてやって、頭を自分の膝に乗せてやる。
「う〜ん、あおいちゃ〜ん……」
「こんな時でもあんたはあおいちゃんかい!」
そのうわ言に、さすがにかちんと来たのか、メイヤが容赦なく頭を引っぱたいた。景気のいい音が部屋にこだまする。
「メイヤ〜……俺はあ……」
ふうっと溜め息をついてから、スピンネットの寝顔を見て、ちょっと微笑む。
「ほんとに馬鹿なんだから……」
そのままメイヤは屈みこむと、スピンネットの唇に自分の唇を重ねた。
「へへっ、お酒臭いや」

「この腐れ外道がああああっっっっ!!」
「ぐはああああっっっ!!」
次の日、二人で雑魚寝していた光景を美耶子に見つかり、すぴんねっとが半殺しの目にあったのは、また別の話である。

==== * * * ====

ぐはあっ、我ながら恥ずかしいですわい。
というわけで、かなりマジなスピ会作品になっちまいました。こんなのスピンじゃないやい! と思われてしまったらごめんなさい。マジなスピンという奴をちょっと書いてみたかったんです。単に暴走させるのが苦手っていうのもありますが(苦笑)。スピン談義とかを読みながら色々考えた私なりのスピン像(シリアス部分)ですが、どう受け取られるかはちょっと不安です。
書いてて思ったのは、この二人はやっぱり保護者と被保護者って感じだなあ、と。まあ、これも愛の一つの形でしょう、多分。メイヤもこの時はもう23だしね。
それはともかく、ちゃんと答えを出してあげてくださいね、すぴんねっとさん。泣かしたら、整備課ボンバーだけじゃ済みませんぜ。



--------------------------------------------------------------------------------
ま〜き〜(あおい擁護衆 灰鞄) > キャー!!!はずかしい!!!赤面ラブ!!はずかしい!!こっぱずかしいだ〜!!ゴフッ!・・・ああ・・何とうらやましか・・いやいや、なんとすばらしかですたい。ああ・・呼んでて恥ずかしくて手をぶんぶん振り回しちゃった・・ (2000/07/08(Sat) 14:10:26)
ぐちゃ > なんか祐希とカレンみたい。あの二人も保護者と被保護者だから当然か。 (2000/07/08(Sat) 14:58:36)
神無 > 祐希ちゃんとカレンさん…う、言われてみれば…。っていうか、あおいちゃんって言ってても今までのそれ(何?)っぽくない所が凄いですね♪ (2000/07/08(Sat) 15:01:16)
タク > これぞスピ会の作品!!! (2000/07/08(Sat) 15:17:30)
トリノ > ム…スピ会の存在が実感できる素晴らしい作品でござる★ でもやっぱりオチがつく…(笑) (2000/07/08(Sat) 15:22:31)
ひじり > 最後の方、読んでて恥ずかしくなっちゃった……(笑) (2000/07/08(Sat) 19:28:47)
高原ユウ > やっぱり、リヴァイアスクルーのカップルって、女性のほうが積極的な場合が多いですね(笑) (2000/07/08(Sat) 22:31:46)
アルファン > うわぁ〜!キャァ〜〜!ヒュぅうぃ〜〜〜!!……(壊) (2000/07/09(Sun) 00:14:58)
柏木カユマ > いけいけメイヤちゃん!!押しまくった方の勝ちだ! (2000/07/09(Sun) 01:38:15)
すぴんねっと > ・・・・・・!!(赤面) お、思わず床を転げ回ってしまった・・・(爆) マジスピンの描写はばっちりだと思います♪ 答えは・・・た、頼むから待って下さいね(^^;) まあそれはともかく、ちゅーしてもらったのはスピンで半殺しにされたのは私かい(笑) (2000/07/09(Sun) 01:49:37)
coil > すみませーん、最後に名前が平仮名になってるのは、単なる間違いです。なんつー間違いをしてるんだ、私は(汗) (2000/07/09(Sun) 07:21:19)

作者別index
総合index
小説入口
top