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jazz(仮題) 「船籍不明の小艦隊が本艦を追尾しています、警告なさいますか、艦長」 ブリッジに冷静な声が響いた。手のあいているブリッジクル−は緊張と多少の好奇心のこもった視線を艦長席の人物に投げかける。少なくとも落ちついている間は貫禄有り、と言われている艦長は沈黙を守ったまま副艦長を見やり、うなづくと、「いや…艦内に第三級警戒態勢を通達するように」と言った。少し驚いた様子のクル−だったがこの間のガニメデ軍との一件を思い出してうなづく。冷静な声の持ち主が艦内放送のマイクをとりあげたときレ−ダ−を監視していたクル−が絶叫する。ふいに追尾船の熱量計測値が跳ね上がったのだ。 「エネルギ−反応増大!この熱量反応からすると一級戦艦クラスと思われます!」 その絶叫が別の絶叫に取って代わられる。 「こちら第一レ−ダ−監視室!後続の不明艦よりエネルギ−派接近中!有弾頭ミサイルと思われます!」 間髪を入れず冷静な声がマイクに叫ぶ。 「第一級警戒態勢!総員、耐ショック準備!VG要員はリフト艦へ!」 ブリッジはその瞬間、怒号が飛び交う場所と化した。 「五時より有弾頭ミサイル接近、リヴァイアスまで後50秒!」 「四時半、五時半に重力フィ−ルドを展開しろ、六時へ流せ!」 「最外壁ブロックを全て閉鎖!総員簡易ゲドゥルト防御服着用せよ!」 「ミサイル残り着艦まで残り20秒!」 「二時より敵艦!新手です!」 「二時の敵艦よりエネルギ−派確認、ミサイルです!」 「ええい、一時から三時までにフィ−ルドを急げ!ミサイルをフィ−ルドで流して五時の艦隊にぶつけてやれ!」 「着弾!」 リヴァイアスが揺れた。重力フィ−ルドはかろうじて間に合ったものの完全に衝撃を吸収することはできなかった。ゲシュペンスト戦以来の戦闘による衝撃である。重力フィ−ルドに捉えられての衝撃だから爆発音自体は聞こえないもののその衝撃は乗員を陥らせるのに充分だった。衝撃とともに遅れた緊急警報が響き渡る。そして同盟へと連絡が飛ぶがその電波は敵艦隊の妨害により届くことはなかった。 やはり怒号が飛び交う中、艦内のレ−ダ−整備に負われていた沖田ともは奇妙な電波を受信していることに気付く。緩やかな波長のそれは今までともが見てきたどの波長にも似ていない。強いて言えば歌だろうか。ともは何の気無しににそれをIDカ−ドへ記録するとまた整備へと駆け出していった。 ふいにリヴァイアスが揺れた。ほとんど完璧なまでの重力コントロ−ルが暴走しているのだ。ソリッドル−ムのコンピュ−タ−は意味のないソリッドを自己複製しつづける。!!!#$//////65636273&&$#$upds##%&&&&&&&&))))))))))))))#########ブリッジへ艦内のいくつもの部署から呼び出しがなされるがブリッジは応答を返すことができない。そして数分後、リヴァイアスの進路に数十年前、実験的にテラフォ−ミングされた小惑星メガ−ヌが迫ってきた。 「進路変更できませんっ!」 「スフィクスはどうした!」 「所在不明!」 「艦内重力1.5Gを超えて上昇中!」 「あ、あの小惑星に引きずられます…いや、あの惑星がこちらを捕捉しぶつかってきます!」 「衝突は避けられません!」 「総員、耐ショック準備!重力環境下衝撃に備えよ!」 小惑星とはいえリヴァイアスから見ればそのサイズははるかに巨大で、それが毎秒数キロの速さで目前に迫ってくる迫力は乗員、特に有視界位置を占める航宙課の人間の恐怖を誘う。 「このままだと岩にぶつかって惑星ごとコッパ微塵だ!なんとか降陸最適地を探せ!」 「衝突予想位置より3時方向、5キロに人工湖があります!」 「よし…衝突の瞬間まで目一杯艦を引き付けて衝突予想地点上空1キロに重力フィ−ルドを20秒展開!船をずらして湖に潜りこめ!」 「10秒までしか機関が持ちません!ジェネレ−タ−が焼き切れます!」 「馬鹿、今、焼き切らないでいつ焼くんだよ!15秒できっちり焼き上げろ!」 「了解!」 狂った重力コントロ−ルを取り戻そうと必死にソリッドが組まれる。 「重力フィ−ルド展開10秒前、8、7、6、5、4、3、2、1、0!」 カウントが0になった瞬間リヴァイアスと小惑星の間の大気が歪む。あまりの高重力フィ−ルドを短時間で展開したため重力レンズ効果(注一)が生まれているのだ。毎秒数キロの勢いで突っ込んだリヴァイアスがその重力のクッションに受けとめられて一気に減速していく。しかしまだ減速が足りない、このまま小惑星の岩の大地にぶつかるかに見えたその時だった。 「重力フィ−ルド、9時方向に噴射!滑らせろ!」 リヴァイアスの舷側が傾くと大気にむかって形のないエネルギ−がほとばしる。そしてリヴァイアスが重力のクッションを滑り始めたときクッションにしたフィ−ルドが切れた。 「下方重力フィ−ルド消失!」 悲鳴にもにたその言葉が音声化してブリッジに響くと同じにリヴァイアスは凄まじい音を立てて着水した。大気との摩擦熱が人工湖の水を一気に蒸発させあたり一面に深い霧を発生させる。そして湖水とともに宙に飛んだ魚が一瞬に干からびて生臭い匂いをあたりに散らす。さして深い湖では無かったが重力のクッション、そして水のクッションと二段構えの減速によりさしたる被害もないようだった、そうリヴァイアス自体には。 実験的にテラフォ−ミングされた小惑星メガ−ヌに突如、降陸したリヴァイアスはその後、沈黙したままだ。救難信号を打ち上げた様子もなければ乗員が降りて調査を開始する様子もない。このような際には上空からの制圧射撃があるのが通常だがリヴァイアスを小惑星へと首尾よく追いこんだ艦隊も沈黙を守っている。そして小惑星の住人もまた沈黙を守っている、いや、なんだろう、今や干上がった湖の回りに迷彩服を着た一団がよく訓練された目になら見える。 「一般乗員は全て殺せ。ツヴァイならびに軍属は捕虜とせよ。」 迷彩服を着た一団が黒のリヴァイアスにとりついた。宇宙では無敵を誇るリヴァイアスがいまは無抵抗のまま無粋な重力の民に犯されるのを黙って待っているかのようだった。 迷彩服の一団から数人が先行すると壁に粘土状のものはりつけコ−ドを伸ばす。しばらくすると腹に響く爆発音とともにリヴァイアスの外壁に穴があく。よく訓練された一団がアサルトライフル(注ニ)を腰溜めに飛びこんだとき「穴」の周囲が局地的に歪む。黒のリヴァイアスの特殊能力だ。歪んだ重力環境下で誰かが敵襲だと勘違いして発砲してしまう。上も下も狂った重力環境でその弾丸は迷走し迷彩を朱にそめていく。このような軍事行動上まれに凄惨な同士討ちだったが、それを演出したリヴァイアスブリッジのメンバ−の顔色も劣らず青ざめていた。この船はその力を武器として使用した際にもっともその実力を発揮する、そのことを改めて乗員に認識させた一幕だった。 息のある迷彩服の数十人がツヴァイの前に連行されたが、尋問は遅々として進まなかった。捕虜は国際法に基づく待遇を要求するだけだし基本的に年少者の多いツヴァイにはこのような場合に行うべき決断をする覚悟がまだ無かった。そこで同盟より派遣された立場だからと強引にその場に立ち会った一人の男が前に出た。その男はもてあそんでいたメスを捕虜の一人の胸に付きたてると軽薄そうに言った。 「生きたまま腑分けにされたくなかったら聞くことに答えろ、国際法なんぞ知ったことか」 話ながらもその手はメスをえぐり続ける。ひときわ高い絶叫が響いたときにようやく尋問がはじまった。尋問の方法についてツヴァイがその後、語ることはなかったが使われた部屋からは成人男性の死体が運び出され看護課で処理されたという。 看護課は大騒ぎだった一連の戦闘で乗員のほぼ全ての人間が重軽傷を負っていたからだ。ただリヴァイアスは他の艦とは違い生い立ちからして不幸な船だったから皆、なれていてそれほどの混乱があったわけでもない。そのなかで猫目今日四郎は治療を待つ重傷者の元にいた。 猫目今日四郎は意識を失った患者をざっと診察すると手首にカラ−テ−プ(注三)を巻いていく。青は治療までに若干の余裕有り、黄は緊急に治療を要す。滅多にないことだが赤のテ−プを巻かれる患者もいる。つまり見込み無し。治療するに及ばず。そのうちに看護課の生徒一人が猫目に猛然と抗議を開始する。まだ、助かる、と。猫目はとぼけた顔で聞き流すと重傷を負ったその患者を蹴り飛ばす。そして、ほら、死んだ、という。 その時、ツヴァイからの放送がようやく始まる。高度に組織化されたテロ集団に狙われていること。国家の関与も否定できないこと。同盟との折衝などで少なくとも一週間は戦闘状態が続くこと。その他、あったが看護課の人間には寿命を数日延ばしたところで意味のないことがわかれば充分だった。何も言えない生徒を置いて作業を続ける。青、青、黄、青、青、青、赤、黄、黄。青が思ったより多いのが幸いだった。この日、猫目今日四郎は三十人の死を決定付け、五人を自らの手で殺した。 第二次長征はじまって以来の長い一日が終った。 注一:高い重力のひずみによって光が曲がる現象。地球から太陽方向の天体を観測する場合、太陽の重力レンズ効果により実際とは別の位置に天体が見えることから現象が発見された。後に一般相対性理論によって証明される。光は重力場でまがりそこでは時間もゆっくり進む、これがTheory of Relativityとして有名な定義であり理論じたいも幾つかのほころびが見つかったものの、全てが崩されることなくその理論の正しさを全ての自然のなかに歌っている。 注二:1943年に旧ソ連で制式化され(AK47)1970年代にその完成を見た、全/半自動射撃能力を兼ね備え小口径高速弾を用いる自動小銃。源流はドイツに求められるが(MP43)実用化はソ連のほうが早かった。その後ガンマニアが泣いて喜ぶ名銃を多々輩出したカテゴリ−でもある。 注三:1990年代後半に日本でおこった相次ぐ医療事故は一見なんでもない確認事項を怠ったことによるものが多い。それだけに根絶は難しいのだが。ただその後このように患者の手首に名入りのバンドを付けさせたりという改善もされた。また相次ぐ災害で災害時の医療行為にも大きな波紋を投げかけた時期でもある。 注四:上記の注はわりにいい加減な塩梅で書いてます。なんとなくSFっぽさを出したかった小演出なんで。^^; -------------------------------------------------------------------------------- 鳥乃 > おお!何時に無く長い…。猫目氏トンでもない医者だがや…。これって続くんですよね〜続きが楽しみだなぁ…(笑) (2000/10/05(Thu) 12:21:26) バルス > 青、青、黄、青、青、青、青青〜♪青が多くてホントよかったね♪(違) (2000/10/05(Thu) 14:27:36) すぴんねっと > SFしてるなぁ・・・。うーん、こういうの書きたい(^^;)。「宇宙では無敵を誇るリヴァイアスがいまは無抵抗のまま無粋な重力の民に犯されるのを黙って待っているかのようだった」が好きです。 (2000/10/05(Thu) 22:36:00) ぐちゃ > ツヴァイって操船屋でしかないよな。尋問(拷問?)ならブルーあたりに任せれば良いのに。 (2000/10/05(Thu) 23:34:21) 長安 > これが、きのうのチャットで言っていたSSか。死者が出てる分、こっちのほうが物騒だけど、上のむげんにさんのSSと微妙に重なっていますね。 (2000/10/06(Fri) 00:52:15) ゆうきゃん > 合理的治療ってやつですね、昨日話した。冷酷かもしれんけど、それがベストとも限らない。生きるってのは、ベターを求め続ける旅みたいなもんでしょう。 (2000/10/06(Fri) 01:12:37) ほろほろ > 柄じゃないの書いちゃったなぁ。^^; 鳥乃さん>猫目…(汗)ええっと、残り二回くらいで終ります。 バルスさん>反応するのはそういうところばっかりかい。^^; すぴんねっとさん>「犯」がいいの?人間として間違ってるような。(笑 ぐちゃさん>ん〜〜。ブル−とか使うとキャラ物SSになっちゃうでしょ。キャラが特殊すぎて。できるだけ一般的な話にしたかったんで。 長安さん>うん、死人が出ちゃった。^^;でも、戦闘して死人が出ないのも不自然ですしねぇ…。 ゆうきゃんさん>健常者を生かすのがベタ−な状況と怪我人を治すのがベタ−な状況。それぞれどちらがいいとも言えませんけどね。 (2000/10/06(Fri) 16:14:55) |