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ひとりよがりの季節 「ひどい話ですよね、女の子に恥をかかせるなんて!」 神無・デュセルが何やら怒っている。普段ならそんなゴシップには興味の無いふりをして助手をいじめるケイオスティ・トリノだったが、ここ数日のあまりの暇に耐えかねて彼女が持ちこんだゴシップにあっさりと降参することになった。そして神無嬢が用意したお茶を当然のような顔で飲み干すと続きをうながす。 …地球から研修で数人の学生が乗艦しましたよね。その中の一人の女の子なんです。研修中に仲間とはぐれちゃったところを警邏していた、ほら、前に一悶着あったドミンゴさん、彼に助けてもらったんですって。それでよくある話っていったら失礼なんですけどいい雰囲気になって、ねぇ、その。 …誤魔化さないではっきり言え?嫌ですよ彼女、友達だもん。それで研修期間が終ってしまうからその前にと思って警邏中のドミンゴさんに声をかけたんです。彼女奥ゆかしいんですよ、ドミンゴさんいつも忙しいそうですし。後姿に声をかけたらドミンゴさんも確かめるように立ち止まってくれたんですって。 …で、彼女、待ち合わせ場所で時間ぎりぎりまで待ってたんですよ。ほらルクスン艦長がお別れパ−ティを突然開いたものだから予定よりも時間、無くなってしまったから。でもドミンゴさん来てくれなくて、でも、それはいいって言ってました。振られちゃったって、それだけよって。 …何がそんなに怒る話だ、よくあることだって?いいからお聞きなさいよトリノさん。人の話を聞くのが探偵の仕事じゃないですか。何?名探偵はそんなことしない?灰色の脳細胞を気取らないでくださいよ、もう。 …ええっと何処まで、そう、その後ですよ。パ−ティで彼女ずっと落ちこんでてね、何も言ってあげられなくて。でも憂愁の美女って言うんですか、凄くきれいでしたよ。ちょっと大胆かなって思うドレスも品良く着こなしてましたし。恋は女をきれいにするってホントですね。その時、やたらめかし込んだドミンゴさんが色気ムンムンの人と話してるのが見えたんです。明らかにからかわれてるのにドミンゴさんったらホンット−に!真剣そのもので。あんな色気おばさんにひっかかるなんて!かえって彼女とつきあわなくて良かったくらいですよ。そうこうしているうちに見ているのに気がついたんでしょうね。女の人に背中を押されて明らかに酔ってるドミンゴさんがこっちに来たんですよ。 …もう、あんな人だとは思いませんでしたよ!酔ったデカイ声で彼女に向かって、今日は大胆で美しいだの、会うたびに色っぽくなるねだのと、ついさっき振っておいてよく言いますよ!馬鹿色気女に遊ばれた挙句に振った後ろめたさかなんか知りませんけど、大勢のなかでそんな体のことばっかり。彼女、耐えきれなくて部屋から飛び出しちゃいましたよ。 「んで、それだけ?」 「それだけってトリノさん!こんなひどい話がありますか!」 「誤解だよ、誤解」 「何がです?」 「そう睨みなさんな。まずその色気女ってクリフだろ。彼女(?)くらいしかドミンがまともにしゃべれる女っていないからな。んで酒の飲みすぎは度胸をつけるためだろ−ね。最後にからかわれながらも真剣な顔してたのはどう告白したらいいかを聞いてたんだよ」 「告白!だってドミンゴさんは待ち合わせをすっぽかしたんですよ!」 「彼には聞こえなかったんだよ。いいかい俺達はもう慣れてるから気にしないが艦内の大気は地球の二分の一ほどだろ。だから数メ−トル離れると急に声が届きにくくなる。おまけにあちこちで作動音が響いているし。彼女は地球からきたばかりでそれがわからなかっただけさ。彼が立ち止まったのは二人きりの通路で告白するかどうか悩んで立ち止まっただけ。で、警邏中の突然の出会いにびっくりした彼はその場で告白できずに、必死にめかし込んでパ−ティで告白することにしたんだ」 「で、でも酔ってたとはいえどうしてあんな下品なことを言ったんです?馬鹿にしてるとしか思えないような下品な物言いでしたよ」 「まず、言えば彼は背が低いだろ。だから自分より背の低い彼女といい雰囲気になれてホントに嬉しかったんだよ。ところが数日たってみると彼女の背が自分より高かった。で、気後れしちゃったんだ」 「背が伸びた?」 「地球よりも低重力だからね。地球からきたばかりの彼女の脊椎骨の間の椎間板が伸びたんだ。だから艦を降りる日の彼女の色っぽかったこと!服の丈は変らないのに、宇宙にいる間で身長が六センチも伸びたんだからな。おまけに内蔵が持ち上げられてウエストはくびれるし。キミも地球から持ってきたスカ−トとか着てる日はやたら色っぽ…いやなんでも無い」 やや視線の色を変えた神無嬢の無言の言葉を遮るようにトリノはまとめに入る。 「神無君が彼女にあったのは最近だろ。ドミンゴの奴は歓迎パ−ティで彼女にあってるはずだからな」 「じゃ、それじゃ、今から二人に教えてあげればきっと…」 「神無君、神無君、探偵が扱うのはロジックさ。恋のマジックは守備範囲じゃない。わかるわけないだろ」 ケイオスティ・トリノは恥かしい言葉を臆面も無く口にすると今度は神無嬢のお茶を横取りしたがIDカ−ドの通信モ−ドに飛びついた彼女は気づかなかった。その様子を微苦笑を浮かべながら見つつトリノはモニタ−をニュ−スに合わせる。 「…研究チ−ムを乗せた可潜艇が酸素漏れによる火災により爆発しました。尚、生存者の確認はとれていません。詳しい状況は続報が入りしだいお伝えします。事故と同時に惑星間同盟政府に宇宙環境保護団体SPACE WARRIORSを名乗る犯行声明が届いており現在、確認中ですが同団体は関与を否定している模様。繰り返します。太陽系惑星間同盟所属ヴァイア艦研究クル−及び研修生を乗せた可潜艇が酸素漏れによる…」 トリノは音声を消すと映像はそのままでゆっくりと振り返った。そして小さな肩をふるわせて瞳に奇妙な色を浮かべる助手に問い掛ける。 「泣かないの」 「探偵さんの前じゃ、泣きませんよ」 こわばりながらも微笑を浮かべ答えた彼女をしばしみつめ、ややあって納得顔で一つ、二つうなづく。 「じゃ、俺が泣こう」 神無・デュセルが驚いて見守る前でトリノは目頭を押さえて低く嗚咽をもらして見せたが、あるいは泣きまねかもしれなかった。 …ん?スピンまた来たの。ウチは恋愛沙汰は扱わないよ。ウチで扱うのはロジックさ。じゃあな。バタン! …ん?ならミラクルはどうだって。馬鹿だな人知を超えてるからミラクルなんだろ。実家がラジオ局の坊主に人生相談でもしてもらえ。バタン! -------------------------------------------------------------------------------- ほろほろ > ちなみに書いてる間の仮タイトルは「とっつぁんの惚れた女(ひと)」だったり^^; (2000/07/30(Sun) 17:34:37) トリノ > 珍しく探偵らしい分析をしている…サポート版の話はこれの事だったんですね…。マイキャラながらカッコつけてくれるね、助手(とドミンゴのとっつぁん)のため(?)に泣いてみるとは…。 でもリヴァイアスの重力は1Gの筈では…?因みに、「名」では無く「私立」探偵なんです…(変なこだわり)それにしても書いてくれてありがとうございます! (2000/07/30(Sun) 20:46:49) ま〜き〜(あおい擁護衆&綾会) > うおおお、なんかいいぞ探偵さん♪ (2000/07/30(Sun) 20:52:51) 高原ユウ > うんうん、名探偵と私立探偵は違いますわな(変なところで共感)>トリノさん ……この環境保護団体、どこかで聞いたよーな(笑) (2000/07/30(Sun) 21:32:41) ワイルドキャット > みんな猿におなりーーーっ!(爆) (2000/07/30(Sun) 22:18:27) ゆうきゃん > はぁ、かわいそうだ・・・。ドミンゴ君も何だかねぇ。宇宙では胴長になるってこと・・・?ワイルドキャットさん>ママー、許してよ、ママー。ってやつですよね。 (2000/07/30(Sun) 23:07:14) ほろほろ > トリノさん>作業効率は低重力のほうがいいですから無理に1Gにはしてないと思うんですよ。ただ無重力というのも不便なんで低重力だろうという考えです。「名」じゃなかったのね。^^; ま〜き〜さん>探偵だってのにミステリが無いもので…ってミステリになってないけど。(わお) 高原さん ワイルドキャットさん>賞金が掛かってたりモンキ−ウイルスをばらまいたりはしません。 ^^; ゆうきゃんさん>胴長ですねぇ。ただウエストも7センチほどはすぐに細くなるようですから足をカバ−できる洋服ならばいい感じでは無いかと。 読んでいただいてども! (2000/07/30(Sun) 23:48:13) 神麻 薫(チーム着ぐるみ・19&神麻組組長) > 神無ちゃんが怒るのは感情的にはわかりますね。その誤解を鮮やかに解くトリノ、格好良い☆そして、さりげにドミンゴくん不幸(笑) (2000/07/31(Mon) 01:21:44) すぴんねっと > しんみりするなぁ・・・。素敵なSSですね。――オチ?(^^;) (2000/07/31(Mon) 02:23:41) トリノ > オチが良いですよ・・・オチが・・・(笑) (2000/07/31(Mon) 02:33:39) 神無 > 切ないです…。弱さを見せないと。話の雰囲気とても良いですね♪かっこいいです…オチまで(笑)色気ムンムンは…死語だ…(笑) (2000/07/31(Mon) 22:06:12) 長安 (あおい擁護衆) > この世界の環境保護団体って、なにを守るの?まさかゲドルゥト? (2000/07/31(Mon) 22:29:13) ほろほろ > 神麻さん>最初はドミン君を不幸にする気は無かったのですがミステリの神様が「探偵に死人はつきものだろ」とおっしゃられたので。^^; すぴんねっとさん>オチは書いたものの出す気は無かったんですけど…受けたみたいだしいいか。^^; 神無さん>「色気…」はそうなんですけどドミン君には「セクシ−」よりも「お色気」とか「悩殺」のほうが効きそうだったもんで。(笑) 長安さん>ヴァイアは頭のいい動物だから軍事利用しちゃいかん、とかだと思います。人格(?)があるようだから人権保護団体のほうがよかったかな? (2000/07/31(Mon) 23:23:28) 高原ユウ > 当のスフィクスは喜んでるんだぞ〜、と言っても信じてくれないんだろうなあ(笑)>環境保護団体 (2000/08/01(Tue) 02:30:48) ドミンゲス(誤変換王) > 「静」の美しさに満ちたSSです。トリノさんと神無ちゃんがとても素敵で、羨ましいですねぇ。 (2000/08/01(Tue) 16:00:55) ほろほろ > 高原さん>そりゃあ、ね。(笑 ドミンゲスさん>美しいなんて言われると恥かしいですね。^^;最初はドミン君幸せになるはずだったんですけどね〜、やっぱり探偵が関ると周囲の人間は不幸になってしまうようです。 (2000/08/02(Wed) 02:24:57) トリノ > そんなぁ!探偵とは因果な職業なり・・・(笑) 恨みも買い易いし・・・ (2000/08/02(Wed) 03:47:09) ほろほろ > 探偵が関るから不幸になるのか不幸な人間が探偵のところに集まるのか…恨み買うほどの依頼があるんですか?(笑 (2000/08/02(Wed) 23:23:53) |